介護にまつわるお金

【知らないと損!】高額介護サービス費とは?対象者・申請方法を徹底解説

高額介護サービス費とは?

介護保険サービスを利用している方、またはこれから利用する予定のある方にとって、毎月の費用負担が気になることも多いのではないでしょうか。もし、あなたや家族が介護保険サービスをたくさん利用した場合、「高額介護サービス費」という制度を利用するだけで、支払った費用の一部が戻ってくる可能性があります。

この記事では、高額介護サービス費の制度概要から、対象となる方、具体的な申請方法、そして注意すべき点までを徹底解説します。

高齢者の方を専門に、病院と入所施設で約8年間、社会福祉士・介護支援専門員として数々の相談を受けてきた筆者が解説します。

介護保険サービスをたくさん利用したいときも安心な
高額介護サービス費制度

安心な介護

「介護保険サービスをたくさん利用した月は、費用も高額になってしまう…」そう思っていませんか?実は、一定の金額を超えて介護保険サービスを利用した場合、その超過分が払い戻される「高額介護サービス費制度」というものが存在するのです。

この制度は、介護保険の自己負担額が著しく高額になった場合に、ご本人やその家族の経済的な負担を軽減することを目的としています。つまり、介護サービスを安心して利用できるよう、国がサポートしてくれる心強い制度なのです。

まずは、どのような方が対象となるのか、詳しく見ていきましょう。

高額介護サービス費の対象と特徴2つ

特徴2つ

高額介護サービス費制度の対象となる方には、いくつかの条件があります。また、この制度には知っておくべき重要な特徴が2つあります。

対象:所得に応じた負担上限額を超えた方

高額介護サービス費の説明

高額介護サービス費の対象となるのは、介護保険のサービスを利用し、1ヶ月の自己負担額(原則として費用の1割、所得に応じて2割または3割)が、世帯の所得区分に応じた上限額を超えた方です。

高額介護サービス費の負担上限額(月額)は、世帯の所得状況によって異なります。

所得区分 負担上限額(月額)
生活保護受給者など 15,000円(世帯)
市町村民税非課税(年金収入などの80万円以下など) 15,000円(個人)
24,600円(世帯)
市町村民税非課税(上記以外) 24,600円(世帯)
市町村民税課税~課税所得380万円未満(年収約770万円未満) 44,400円(世帯)
課税所得380万円(年収約770万円)以上
~課税所得690万円(年収約1,160万円)未満
93,000円(世帯)
課税所得690万円(年収約1,160万円)以上 140,100円(世帯)

このように、低所得者ほど負担上限額が低く設定されており、経済状況に配慮した仕組みになっています。

参考:高額介護サービス費の負担限度額が見直されます(厚生労働省PDF)

なんで知らないと損なの?

多くの方が、この制度の存在を知らないまま介護サービスを利用しています。でも、以下のような方は高額介護サービス費の対象になる可能性が高いです。

  • 要介護度が高くなり、複数の介護サービスを利用し始めた方
  • 短期間で集中的に介護のサービスを利用した方

例えば、経済的な負担を考えて、介護サービスを最小限にしながら在宅での介護を頑張っておられる方もおられると思います。そして、この制度を知って介護サービス利用をして大丈夫かもと気づいていただけると嬉しいです。

特徴1:世帯合算の仕組みがある

老夫婦が手と手を取り合う

同じ世帯内で複数の方が介護サービスを利用している場合、それぞれの利用者負担を合算して上限額を適用できます。例えば、夫婦で介護サービスを利用している場合、二人分の負担を合わせて計算し、上限額を超えた分が払い戻されます。

これにより、ご夫婦で介護サービスを利用している世帯の経済的負担が大きく軽減されます。

特徴2:申請しないとお金は戻りません

お金の画像

高額介護サービス費は、自動的に払い戻されるわけではありません。原則として、利用者自身またはご家族が市区町村に申請する必要があります。
申請用紙や払い戻しの金額の通知は基本的に市区町村から郵送されます。でも、他の郵便物に紛れて忘れていたり、大きい金額じゃないと思って申請を後回しにして忘れていた…という方もいます。

初回のみ申請が必要ですが、2回目以降は自動的に指定した口座に振り込まれる制度です。そのため、初回の申請は後々のことを考えて忘れずに申請しましょう。また申請方法については、後ほど詳しく解説します。

おまけ:介護も医療費もどちらもかかったときは

高額介護サービス費とは別に、医療費もかかってしまったという場合には「高額医療・高額介護合算療養費制度」もあります。医療保険と介護保険の両方の自己負担額を合計し、年間の上限額を超えた場合に払い戻しを受けられます。

この制度は年間(8月1日〜翌年7月31日)での計算になるため、毎月の高額介護サービス費とは別に申請が必要です。特に医療費と介護費用の両方がかかっている世帯は、この制度を活用することで大きな負担軽減が期待できます。(詳しくはこちらの記事)

高額介護サービス費制度の大事な注意点2つ

注意点

高額介護サービス費制度は非常に心強い制度ですが、利用するにあたって注意しておきたい点がいくつかあります。ここでは特に重要な2つの注意点について解説します。

1.食費、居住費、日常生活費等は対象外

例えばの画像

高額介護サービス費の対象となるのは、あくまで介護保険が適用されるサービス(入浴、排泄、食事介助などの日常生活の介護や訪問リハビリなど)の自己負担額です。そのため、施設での食費や居住費、日常生活に必要な費用(理美容代やレクリエーション費用、福祉用具の貸与・購入費用、住宅改修費など)は、高額介護サービス費の計算には含まれません

例えば、特別養護老人ホームに入所している場合、介護サービス費は対象になりますが、食費や居住費は対象外です。しかし、所得が少ない方の施設入所では「介護保険負担限度額認定」という別の制度があり、食費や居住費の負担軽減の措置があります。(詳しくはこちらの記事)

2:忘れずに申請をしましょう

申請書を書く画像

高額介護サービス費の申請は、先述の通り申請しないとお金は戻らない制度です。また、申請期限(サービス利用の月の翌月から2年以内)もあります。2回目以降は自動で指定した口座に振り込まれるため、早めに申請することをお勧めします。

申請に必要な書類は以下の通りです。

  • 高額介護サービス費支給申請書(郵送で送られてきます市区町村窓口やウェブサイトで入手可能)
  • 介護保険被保険者証
  • 本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
  • 振込先の口座情報がわかるもの(通帳やキャッシュカードのコピーなど)
  • 印鑑(自治体によって必要な場合があります)

自治体によって必要書類が異なる場合があるため、郵送されてきた書類を確認し、分からなければ事前に問い合わせることをお勧めします。

申請方法の例(お住まいの市区町村によって手続きが異なる場合があります)

  1. 申請書類
    お住まいの市区町村から郵送で届きます。失くした場合は介護保険担当窓口で申請書を受け取るか、ウェブサイトからダウンロードします。
  2. 申請書の記入
    必要事項(氏名、住所、サービス利用状況、振込口座など)を正確に記入します。
  3. 必要書類の準備
    介護保険被保険者証、本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)、振込先の口座情報がわかるもの(通帳やキャッシュカードのコピーなど)など、市区町村が指定する書類を準備します。
  4. 申請
    記入済みの申請書と必要書類を、お住まいの市区町村の介護保険担当窓口に提出するか、郵送します。

ご不明な点があれば、遠慮なくお住まいの市区町村の介護保険担当窓口に問い合わせてください。

まとめ:高額介護サービス費制度を確認しよう

高額介護サービス費制度は、介護サービスを多く利用する方にとって大きな負担軽減になります。特に以下のポイントを覚えておきましょう。

  • 1ヶ月の介護サービス利用額が所得に応じた上限額を超えたら、申請することで超過分が払い戻される
  • 初回のみ申請が必要で、2回目以降は自動的に振り込まれる
  • 同じ世帯内の複数の介護サービス利用者で合算できる

高齢化社会が進む中、介護サービスの利用は増加傾向にあります。そのため、自分自身や家族のために、こうした制度をしっかり理解し、すぐに動けるようにしておくことが大切です。
また、介護費用の負担に不安を感じている方は、お住まいの市区町村の介護保険担当窓口に相談してみることをお勧めします。

ABOUT ME
スイカ湯
高齢者の方を専門に、病院と入所施設で約8年間、社会福祉士・介護支援専門員として数々の相談を受けてきた筆者が解説します。