介護にまつわるお金

【介護施設の費用が払えない】社会福祉法人等による利用者負担軽減とは?

社会福祉法人等による利用者負担軽減制度とは?

介護施設の利用には費用がかかります。その費用が負担となってしまい、必要なサービスを受けられないと悩んでいる方もいるのではないでしょうか。実は、社会福祉法人が運営する介護施設を利用している場合、「社会福祉法人等による利用者負担軽減制度」を利用できる可能性があります。この記事では、この制度について詳しく解説し、制度の対象者や注意点などもご紹介します。

医療・福祉業界で直接支援を10年以上、高齢者の方を専門に病院と入所施設で約8年間、社会福祉士として数々の相談を受けてきた筆者が解説します。

社会福祉法人の介護サービスを受けているなら、
社会福祉法人等による利用者負担軽減制度

食事介助の画像社会福祉法人等による利用者負担軽減制度とは、経済的な理由で介護サービスの利用が困難な方に対して、社会福祉法人が運営する介護施設の利用料の自己負担を減らしてくれる制度です。そして、低所得の高齢者などが安心して介護サービスを受けられるようにすることを目的としています。
対象となるサービスは、社会福祉法人が運営する特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護療養型医療施設、介護医療院などの施設サービス、そして居宅介護支援、訪問介護、通所介護などの在宅サービスです。
また、この制度は介護保険制度とは別の制度です。そのため、介護保険の軽減制度(高額介護サービス費の支給など)を利用している場合でも、併用することが可能です。

実は、社会福祉法人は非営利事業である社会福祉事業を行うことを目的としているので、普通の会社とは違い土地や建物などにかかる固定資産税の免除や法人税の優遇があるんです。

社会福祉事業=地域の高齢者・子どもなどの社会的弱者を支えるための事業で、特別養護老人ホーム、児童養護施設、保育所、障害福祉サービス事業などです。

このように、社会福祉法人には公的な面があるので負担軽減の制度があるのです。ただ、社会福祉法人自体の収入が減ってしまうので、この制度を社会福祉法人側からすすめられることはまれだと思います。
ご家族様やご本人様、担当のケアマネージャーさんを含めて、この制度を知らないばかりに、本当は利用できるのに…と思う方も見てきました。この制度を知って、利用されていない方が利用して負担が少しでも少なくなると嬉しいです。

社会福祉法人等による利用者負担軽減制度の対象と
特徴2つ

対象は?この制度を利用できるのは、以下の条件をすべて満たす方です:

  1. 市区町村民税非課税世帯である(生活保護受給者を除く)
  2. 収入や預貯金等が一定基準以下である
    • 年間収入が単身世帯で150万円以下、世帯員が1人増えるごとに50万円を加算した額以下
    • 預貯金等が単身世帯で350万円以下、世帯員が1人増えるごとに100万円を加算した額以下
      単身世帯 2人世帯 3人世帯
      年間収入 150万円 200万円 250万円
      預貯金等 350万円 450万円 550万円
  3. 日常生活に供する資産以外に活用できる資産がない
  4. 親族等から費用負担の支援が受けられない
  5. 介護保険料を滞納していない

参考:社会福祉法人等による生計困難者等に対する介護保険サービスに係る利用者負担額
軽減制度事業実施要綱

特徴1:自己負担額の25%を軽減(老齢福祉年金受給者で50%)

25%軽減この制度の大きな特徴は、介護保険サービスの利用者負担額や食費や居住費(滞在費)を含めた自己負担額が25%(老齢福祉年金受給者で50%)が軽減される点です。

老齢福祉年金は大正5年4月1日までに生まれて(2025年現在109歳)、条件を満たす方が受給できるものです。詳しくは参考:老齢福祉年金とはなんですか?

例えば、10,000円の介護保険サービス費用などの自己負担があった場合なら、25%軽減されると7500円になります。この軽減は介護サービス費の自己負担額が大きくなると非常に大きな支援となります。

特徴2:社会福祉法人以外も対象となる場合がある

名称に「社会福祉法人等」とありますが、地域によっては社会福祉法人がない自治体もあります。この場合は、社会福祉法人以外の事業者(医療法人や株式会社など)も軽減対象サービスを提供していることがあります。自治体によって対象事業者が異なるため、利用している事業所や市区町村役場の介護保険窓口で確認することが重要です。

社会福祉法人等による利用者負担軽減制度の注意点3つ

注意点

注意点1:まれに実施していない自治体がある

この制度は、市区町村が実施しているものです。しかし、すべての自治体の社会福祉法人がこの制度を実施しているわけではありません。
参考:社会福祉法人等による生計困難者等に対する介護保険サービスに係る利用者負担額軽減制度事業 実施状況

また、地域によっては社会福祉法人以外の事業者(医療法人や株式会社など)も軽減制度を提供していることがあります。利用を希望する場合は、事前に介護サービスを受ける施設や市区町村の役場の介護保険窓口に確認することが大切です。

注意点2:申請が必要で、自動的に適用されない

この制度を利用するためには、必ず事前に市区町村窓口での申請が必要です。自動的に適用されるものではありません。また、一度認定されると認定証が発行されます。

申請時には以下のような書類が必要となることが多いです:

  • 申請書(市区町村で配布)
  • 世帯全員の収入が分かる書類
  • 預貯金通帳のコピー
  • 介護保険証
  • 身分証明書 など

まとめ:制度を活用して介護サービスを利用しやすく

「社会福祉法人等による利用者負担軽減制度」は、低所得者の方が介護サービスを利用しやすくするための重要な支援制度です。もしかして利用できるかもしれないと思う方は、ぜひ市区町村の介護保険担当窓口に相談してみましょう。

各自治体によって細かい運用ルールが異なるため、お住まいの地域での具体的な軽減内容や申請方法については、必ず市区町村の介護保険担当窓口で確認することをおすすめします。経済的な理由で必要な介護サービスを諦めることのないよう、この制度を有効に活用しましょう。

ABOUT ME
スイカ湯
高齢者の方を専門に、病院と入所施設で約8年間、社会福祉士・介護支援専門員として数々の相談を受けてきた筆者が解説します。